生殺与奪
~いまからのあらすじ~
積乱雲は殺される。
※■■■は二面体であるため、主体である表が裏の所有物を含めたすべての権限を握っている。

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「我輩(神)は、積乱雲(人)を殺す」
「我輩(神)は、積乱雲(人)を殺す」

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「あのさあ、洒落になんないよ?殺すって言ったら本当に『死ぬ』」
「あのさあ、洒落になんないよ?殺すって言ったら本当に『死ぬ』」

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「君(裏)が望まなくても君(表)がそうする」
「君(裏)が望まなくても君(表)がそうする」

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「我輩(表)になど手出しさせるものか。我輩(裏)の価値を落とした分、その身で償ってもらう」
「我輩(表)になど手出しさせるものか。我輩(裏)の価値を落とした分、その身で償ってもらう」

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「キュムちゃんは殺せないよ。あっち側に君(表裏)が行ったら、パワーバランスが崩れるだろ。この俺ですら、声をかけてちょっとした贈り物をするくらいしか干渉できない」
「キュムちゃんは殺せないよ。あっち側に君(表裏)が行ったら、パワーバランスが崩れるだろ。この俺ですら、声をかけてちょっとした贈り物をするくらいしか干渉できない」

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「あれは、わざわざ君(表)が用意した中立領域だ。わざと目隠ししてスイカを割る遊びがあるだろ?あれと一緒」
「あれは、わざわざ君(表)が用意した中立領域だ。わざと目隠ししてスイカを割る遊びがあるだろ?あれと一緒」

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「君(表)が干渉しないと決めた以上、君(裏)は手出しできない。キュムちゃんが生きるよりよっぽど価値が落ちる」
「君(表)が干渉しないと決めた以上、君(裏)は手出しできない。キュムちゃんが生きるよりよっぽど価値が落ちる」

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「我輩(裏)が行く必要はない」
「我輩(裏)が行く必要はない」

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「……一応聞いてあげるけど。どんな愚行をやってのけたの?」
「……一応聞いてあげるけど。どんな愚行をやってのけたの?」

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「使いを送った。積乱雲が天空神である我輩の子なら、あれは地母神である我輩の子だ」
「使いを送った。積乱雲が天空神である我輩の子なら、あれは地母神である我輩の子だ」

■■■
「乱層雲」
「乱層雲」

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「雨の権限を奪い、神としての価値を引き剥がし――やがて積乱雲を【死】として殺す」
「雨の権限を奪い、神としての価値を引き剥がし――やがて積乱雲を【死】として殺す」

■■■
「そう、命じている」
「そう、命じている」

■■■■■■
「……」
「……」

■■■
「なんだ、その顔は」
「なんだ、その顔は」

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「……君(裏)、自分がなんなのか、一番知らないよねえ」
「……君(裏)、自分がなんなのか、一番知らないよねえ」
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【黒滲】
「殺したくないんだ」
「殺したくないんだ」

キュム
「ゆむむむ……」
「ゆむむむ……」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「積乱雲は、楽しそうだから。それを見ていると、こちらも楽しい」
「積乱雲は、楽しそうだから。それを見ていると、こちらも楽しい」

キュム
「きゅ……ゆゆゆ……」
「きゅ……ゆゆゆ……」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「理屈は分かるんだ。この世を作っている土台が汚れれば、花は咲かなくなる」
「理屈は分かるんだ。この世を作っている土台が汚れれば、花は咲かなくなる」

キュム
「ぅー」
「ぅー」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「積乱雲が生きて、神の価値が下がると、空気は濁っていく。汚染されていく」
「積乱雲が生きて、神の価値が下がると、空気は濁っていく。汚染されていく」

キュム
「ゆ」
「ゆ」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「それは、すごく悲しい。怒りすら覚える。花壇は、踏み荒らされてはならない」
「それは、すごく悲しい。怒りすら覚える。花壇は、踏み荒らされてはならない」

キュム
「……に!」
「……に!」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「でも、積乱雲は、もとから【そう】だった」
「でも、積乱雲は、もとから【そう】だった」

キュム
「♪」
「♪」
キュムは、花冠を作っている……▼

【黒滲】
「嵐が稲を台無しにするように、雷が木を裂くように。無作法で混沌としていて――力を一方的に押し付けて――だからこそ、積乱雲は秩序を作れると思うんだ」
「嵐が稲を台無しにするように、雷が木を裂くように。無作法で混沌としていて――力を一方的に押し付けて――だからこそ、積乱雲は秩序を作れると思うんだ」

【黒滲】
「きっと、あなたは……」
「きっと、あなたは……」

キュム
「ぷやゃあ!」
「ぷやゃあ!」
花冠が完成した!▼

【黒滲】
「あ。うん。おお。すごい」
「あ。うん。おお。すごい」

キュム
「ゆゅゆん」
「ゆゅゆん」
キュムは、花冠を被った!▼


キュム
「ゆ」
「ゆ」

【黒滲】
「ふふふ。……人間の絵本に出てくる、かみさまみたいだ」
「ふふふ。……人間の絵本に出てくる、かみさまみたいだ」

【黒滲】
「……かみさまなら、余計、殺さなくてはな」
「……かみさまなら、余計、殺さなくてはな」

キュム
「ぅ……」
「ぅ……」
キュムは、花冠を見つめている……▼

【黒滲】
「……」
「……」
【それ】は、子に近づく。
明確な殺意は常備している。これを殺せば、自身は砕け散り、全てがもとに戻るだろう。
【それ】を作ったのは、【死】だ。
【死】からは何人たりとも逃れられない。【死】は【地】の領域だ。
全ては【地】に還る。【天】に還ることは、できない。
この子はいてはならない。異物は異物のままにしておけない。
【地】が望むのは、ただ一つ。
い つ も ど お り
行われることが行われることだけ。

キュム
「……」
「……」

【黒滲】
「……」
「……」

キュム
「ゆ!」
「ゆ!」
キュムは、たちあがった!▼

【黒滲】
「あ」
「あ」
また、のがした。わざと。
ときどき殺すふりでもしなければ、すぐに【本物の死】がやってくる。

【黒滲】
「……」
「……」
口に出してはいないが、【それ】はもう決めていた。
子を、ひとでなしにする。
人として、しなせる。

キュム
「♪」
「♪」
キュムは、枝に花冠を引っ掛けた!▼

【黒滲】
「……?置いていくのか?」
「……?置いていくのか?」

キュム
「ゆんゆゅ~」
「ゆんゆゅ~」
キュムは、スキップして走っていった……▼

【黒滲】
「……」
「……」
【それ】は、子が作った花冠を、布状のそれでつかみ、頭と認識している部分に飾ってみせる。


【黒滲】
「積乱雲」
「積乱雲」

【黒滲】
「一緒に神様になろう」
「一緒に神様になろう」
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―――
「【情】と【死】から旅立った子に【情】と【死】を与えるなんて」
「【情】と【死】から旅立った子に【情】と【死】を与えるなんて」

―――
「欠けたパズルにピースがハマるようなもんだろ」
「欠けたパズルにピースがハマるようなもんだろ」