手を伸ばせば届く世の果て

にんげん
「かみさま かみさま どうして」





神はあらゆる事ができ
神はあらゆる事を知り



にんげん
「けれども、神の心は誰ひとりとして知らないのだ」




どうして貧困が無くならない?
どうして虐殺が無くならない?
どうしてみんなが幸せにならない?


それは


にんげん
「悪魔のせいだ!」


にんげん
「奴らは神に対抗しているのだ!」


にんげん
「悪魔が悪い!」



にんげん
「悪魔はこのような形をしている!」


にんげん
「悪魔は神を殺そうとしている!」


にんげん
「悪魔は私利私欲のために我らを苦しめる!」





魔王
「それが俺だ」




_______________


魔王【アエーシュマ】
「君は誤っている」


神【バアル】
「理由を述べよ」


魔王【アエーシュマ】
「俺は『神を否定する』者として生まれたから。そう言うんだ」

魔王【アエーシュマ】
「この世界はおかしい」




神は何故全てを成すのに悪魔を滅ぼさない?




魔王【アエーシュマ】
「なんで俺を殺さない?」


神【バアル】
「至極単純」









_______________



世界は終わった。



分離した神は両方殺され、神の子供は潰され、世界は魔の手に渡った。

これより先は「欲」の世界。

魔王による絶対統治の時代である。

















魔王
「で」


魔王
「……誰だ、お前」


観光客のルエ
「お前の殺した神のそっくりさん」



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                           )ヽ/  ヽ、ノ|ノ´
                            `r      r'
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                             ,              キ人_,/
            `                                )  て
             \ ,,_人、ノヽ                       /´⌒Y,.
              )ヽ    (               、ハ,          \
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              )     て              ./'Y''~ヾ
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    (   、、   、 ’'',   . . ノ  ヾ )
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観光客のルエ
おっと!問答無用で殺す気かよ


魔王
「ここにはもう俺しかいないはずだ」


観光客のルエ
「この世界だけだったらそうなんだろうよ」


魔王
「は?」


観光客のルエ
「要件を手短に話そうか。キュムロー=ニンサバスにこの世界を渡せ


魔王
「……ははっ。キュムロー=ニンサバス?キュムちゃんのこと?お前、亡霊か何か?」

魔王
あれはもう死んだよ。俺が叩き潰してやった!神として成り立つ前に、強制的に孕んだ【死】から引きずり出して、消滅させてやった」

魔王
「この世に神はもういない。あるのは人(欲)だけだ!」


観光客のルエ
「おう。殺したお前が言うんだから間違いないさ。それを覆す気はないよ。死んだものは蘇らない」

観光客のルエ
「だがな、願われたら全部叶えたくもなるだろ?


虚無より聞こえる声
「神の願いは「楽しみたい」――否「滅んでもいい」」


虚無より聞こえる声
「裏の神の願いは「存続したい」」


虚無より聞こえる声
「裏の神の従者――お前が【死】と呼んだやつの願いは「神の子供と一緒にかみさまになりたい」」


虚無より聞こえる声
「神の子供 キュムロー=ニンサバスの願いは「ない」。強いて言うなら「知りたい」」


観光客のルエ
「全部全部、どいつも自分勝手だ」


魔王
「「滅んでもいい?」どういうことだ」


観光客のルエ
「そこに反応するか。そうだよな」


観光客のルエ
「神(あいつ)はお前の願いを叶えてやったんだよ。だから、他のやつの願いを私が聴かなきゃならなくなった」


魔王
「質問に答えろ」


観光客のルエ
「言葉通りだよ。神はお前に心底惚れてたんだ


観光客のルエ
「何度も何度も、自分を否定し続けてくれるお前のことが愛おしくてたまらなかった。お前の全てを繰り返し薙ぎ払い続けて楽しみ続け、とんでもないことを思いついた」


観光客のルエ
「一度くらい、受け入れてもよいのでは?ってな」


魔王
「……え………………」


観光客のルエ
「おいおい、黒幕がそんな顔してるんじゃねえよ。しゃんとしろ」


虚無より聞こえる声
愛されてショックか?


虚無より聞こえる声
知らぬうちに繰り返されててショックか?


虚無より聞こえる声
手加減されてショックか?


観光客のルエ
「それじゃあ、まだまだ人間だな。神様落第だぜ」


魔王
「……ッ」


魔王
「……神は死んだ」

魔王
死んだ!

魔王
「覆されることはない。なら、それもただの「あったこと」だ。死んだやつの話で俺の存在が揺らぐことはない」


観光客のルエ
(……ん。伝えたいことは伝えたからいいかあ。死んだあとにフラれるってどういう気持ちなんだろうな)


魔王
「キュムロー=ニンサバスも死人だ。この座を譲り渡すことはない」


観光客のルエ
「半分肯定で半分否定だ。キュムロー=ニンサバスは死んでるが、世界を私たち(神)以外が動かしてちゃならないんだよ。だから代理の神を立てる」

観光客のルエ
「本当ならここでお前をぶっ殺して世界を閉じるまでだったんだが……」

観光客のルエ
(我輩(私)はそういうところまで見越してたから招待状を寄越したんだろうな)


魔王
死人に神ができるものか!


観光客のルエ
「なにも死人のキュムロー=ニンサバスに神をやってもらう気はないよ」

観光客のルエ
「ほら、あの子にやってもらうからさ」





魔王
「……ソラニワ?」

魔王
「……キュムロー=ニンサバス!?生きて……!?」


観光客のルエ
「お前にもそう見えてるってことは結構上手くいってるじゃん


魔王
「何をした?蘇らせたのか!?


観光客のルエ
「蘇生なんてできないっての。前のキュムロー=ニンサバスじゃあねえんだから……。単に私が「キュムロー=ニンサバス」に仕立て上げただけだ」


観光客のルエ
「……なあ サンタさんって知ってるか?サンタクロース。クリスマスプレゼントをあげる妖精さん。あれってまあ、形を変えた神頼みの擬人化みたいなもんだよな」


魔王
「……」


観光客のルエ
「では問題です。ある子供の兄弟が死んでしまいました。子供はクリスマスプレゼントに兄弟を願いました。サンタクロースはどうすべきでしょうか?


魔王
「……死人は生き返らない


観光客のルエ
「頭固いな。もうちょっと考えろよ。サンタクロースは「何が何でも願いを叶えてくれる」という前提で出題してんだよ。奇跡抜きでモノを作るのが人間の得意技だろ?だったらお前の専門分野だろうが」


魔王
「……」


魔王
「……まさか」


観光客のルエ
「解答は?」


魔王
両親にもう一度子供を作ってもらう……


観光客のルエ
「正解。ちなみに別解として養子をもらう、なんてのも――」


魔王
貴様ァ!


観光客のルエ
うおっ


魔王
それは!別人だ!元の兄弟でもなんでもないだろうが!


観光客のルエ
「んー……お前だって、あれがキュムロー=ニンサバスに見えたんだろ?」


魔王
あれは誰だ!


虚無より聞こえる声
そんなことはどうでもいい

観光客のルエ
「神さまになりたかった子供が、どんな過去を持っているかなんて聞くのは無粋ってやつだぜ」

観光客のルエ
「あれはキュムロー=ニンサバスだ。私が代理にそう名付けて、キュムロー=ニンサバスになった。一緒にかみさまになりたいという【乱層雲】の願いを叶えてやっただけだよ」


魔王
【乱層雲】だって死んでいる!


観光客のルエ
「それもキュムロー=ニンサバス同じことをすれば簡単に解決できる」

観光客のルエ
こっちは自我を入れられなかったが……分離したら困るのは目に見えてたしな。最低限の反応プログラムだけ組んで、あとは【乱層雲】が大切にしていたものと組み合わせただけだ」

観光客のルエ
「でも、一緒になれただろ?もう二度と離れたり、どっちかが死んだりすることもない」


魔王
「あのリボンが生きていると、そう言うのか?」


観光客のルエ
「普段喋らない・反応しないことが死んでいるとは限らないよ。寄り添いたい気持ちを最大限に考慮しておとなしい性格にしただけさ。出会ったら即死の前の二人よりよっぽどいいだろ」


魔王
「……ッ、……ッ!!」


観光客のルエ
「別人を別人であると否定するのは悪いことじゃない。正しいからな。だが、それを指摘せずに見守るのも、また一つの幸せだろ。真実は絶対じゃない。優しい嘘はみんなを救う


魔王
こんなもの、間違っている


観光客のルエ
「原点回帰か。泣けるね。熱い展開だ」


魔王
「お前の話が本当だとしても、全部帳消しにしてやる」

魔王
「……そうだ。全部、壊せばいい。俺が、ソラニワを滅ぼせばいい話だ」


観光客のルエ
「無理だよ。管理コードいじれないから」


魔王
「かんり……?」


観光客のルエ
神はお前に何も教えてくれなかったんだなあ。ソラニワは、こことは別の世界だよ」


魔王
「別の世界であれ、存在する以上神が作ったものだ。なら壊せ――」


観光客のルエ
「作ってない」


観光客のルエ
「お前はソラニワのことを、我輩(私)の一人遊びだと思っていたんだろうが、それは違う。キュムロー=ニンサバスと触れ合っていた者たちを、NPCかなにかと勘違いしてたんだろうが、それも違う。あれは個々の世界とは隔離された中立領域だ」


魔王
「……?」



観光客のルエ
並行世界


観光客のルエ
世界は夥しいほどに存在する。そのどれもに私たち(神)がいるわけじゃない。その一つがソラニワだったってことだ。ここの世界にはたまたま我輩(神)がいて好き放題にしていたらしいが、ソラニワじゃそうもいかない」


魔王
「何を言って――」


観光客のルエ
「言葉じゃ伝わりくいよな。分かるぜ。言葉ってのは力だが、それだけじゃどうにもならない。だから視覚的に教えてやるよ」


















……ぐ ……ぅ

観光客のルエ
「まだ息があるのか」


観光客のルエ
「そりゃそうか。神になりかけてたもんな。しぶといはずだ」


観光客のルエ
「人間に信仰されてたし、元からほとんど神様だったのに。どうしてそんなにも面倒なことをしてたんだろうな、お前は」


かみがきらいだ……

かみになってしまったじぶんも……
かみをあいしてしまったじぶんも……

ぜんぶ……
そんなのおれじゃない……

おれじゃない……

観光客のルエ
(嫌よ嫌よも好きのうちってな)

観光客のルエ
(全部思い通りにしやがって 惚れたってことは惚れさせるってことだ。ゴーカンと同じだ)


このせかいは わたさない
キュムちゃんは かみさまになれない

観光客のルエ
「神の資格ならあるよ。世界も私がちょっと補修すれば済むことさ。なぜならキュムロー=ニンサバスは力を持っている」

観光客のルエ
「前の神の子が所有していた『概念(雷、空など)』『試練としての力(花の技)』『存在としての名前(言霊)』。全てを引き継ぎ、その証明を他の神(私)が見届けた!やや人格神に偏りすぎたが、それはまあ、私の趣味だ」


……

観光客のルエ
「だから安心して任せるといいさ。世界を七日で作った私が認めたんだ。ソラニワじゃなくてもやっていけるよ」


……ひとでなし

観光客のルエ
「面白いこと言うなあ」



観光客のルエ
「その通り」


虚無より聞こえる声
「私は神だ 人じゃない」








【■■■のレポート】


レポートを うわがきすると それまでの すべてのデータが きえてしまいます!

ほんとうに レポートを うわがきしますか?

▶はい













レポートが うわがきされました



虚無より聞こえる声
「ゆゆっ」





なまえをつけてください






【キュムロー=ニンサバス】でよろしいですか?


▶はい






キュム
「キュムロー=ニンサバス!」


キュム
「キュムは、キュムロー=ニンサバス、て、ゆーよ!」




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誰も気づきやしないさ。


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