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チュートリアル用 Dead or AliCe シナリオ

「Swallow the sacrifice.」
GM
GM
拝啓、アリス。
GM
愛しいアリス。
GM
『貴方』が目を覚まして、どれくらいたったでしょうか?
GM
『貴方』はこの国のことをどこまで知りましたか?
GM
知っていても、いなくても。
GM
さあ、一杯どうぞ。
GM
猟奇、才覚、愛。全てを押しつぶし、飲み込んで。
GM
この国は新たなアリスを待ちわびています。
GM
GM
――気がつけば、あなたは、荒野に立っていました。
GM
周囲には何もなく、乾いた地面と濁り曇った空があなたたちを出迎えます。
GM
…………目の前には、あなた以外の人物が二人。
GM
彼らもあなたのように、突然この場所へと招待されたのでしょうか?
アルビー
「…………」
目を開く。
アルビー
(……え?)
辺りを見渡すと、見知らぬ荒野だった。
アルビー
昨晩はいつものように仕事をして、帰宅した際に郵便受けから怪しい文言の手紙を受け取って……そこから先の記憶がない。
アルビー
考えるより先に、咄嗟に腰の銃に手が伸びる。
リラ
テーブルの上に見覚えのない手紙があって。あれ、処理してなかったっけ、と思って開いて文面を読んだら――
リラ
なんか知らない場所にいて。剣呑な顔をしたお兄さんが立ってて。
リラ
「え……っと」
リラ
銃!? 銃を持ってる!?
リラ
「ゆ、ゆゆゆ、夢……!?」
リラ
「その、えっと……こんにち、は……」
いつから夢だったんだろうと思いながら、恐る恐る挨拶をした。
ティット
――気がつけば、荒野に立っていた。
直立不動で、手には招待状を持っている。
ティット
手のひらを空に翳して握ったり開いたり。
ティット
「……ふんふん、手はある足もある。首も捥げてはいないっと」
ティット
持っていた招待状を陽の光に透かしてみたり、ひらひら動かしてみた。
ティット
「これはまた、けったいな事態に巻き込まれちゃったかなっ」
ティット
首の骨をポキポキ鳴らし、ぐるりと周囲を見渡す。
ティット
警戒するように銃に手が伸びる年若い青年と、慌てふためきながら挨拶の言葉を紡ぐ幼い少女の姿が眼前にある。
ティット
「夢か現か幻か ――答えを手早く知りたいのなら、あの銃で頭をぶち抜いてみるのはどうかな?」
ティット
「それが一番お手軽な手段だと思うけど――どう?」
リラ
(こ、今度はもう一人現れた!? すごいとんちんかんな夢じゃない!? これ!)
ぐるぐる………………
アルビー
荒野で、三者の視線が絡み合う。
「…………」
怯えるような少女の眼差しに気づいて、銃から手を離した。
アルビー
敵意はないと示すように空の手をひらひらさせて、人好きのする笑みを形作った。
「やあ――急にごめんね、物騒な真似をしてしまって」
アルビー
「君たちも、招待状を受け取ってここに呼ばれたの?」
アルビー
ティットの方を向いて、
「あはは、そんなことしないよ」
悪戯っぽく笑った。
リラ
目の前のお兄さんがふと表情を和らげる。優しい笑顔だ。
リラ
案外、話の通じる人なのかもしれない。
リラ
って、そうじゃなくて!
「えっと、その招待状っていうのは、この手紙のことですか?」
お兄さんの言葉につられて、私も懐から手紙を出した。
リラ
「ううん、夢にしてはできすぎなのかも……? すごい物騒なこと言ってる人も、手紙持ってるみたいだし……」
ぼそぼそと一人言を漏らす。多分聞こえてないよね?
アルビー
招待状を取り出し、自分も同じだというように見せた。
ティット
「うーわ」
ティット
なんつーあざとい奴……と思ったとか思わなかったとか。
ティット
いずれにしても油断ならない奴だという印象を抱く。
ティット
けれど、それくらい手強い相手である方が面白い。だから、この面の皮の厚そうなお兄ちゃんに対する好感度は上々だ。
ティット
――対して、こっちのお嬢ちゃんはお手軽な印象。
ティット
この第一印象をどう覆してくれるのか、乞うご期待って感じかな?
ティット
「招待状ならオイラも持ってる。みんなお揃いみたいだねぇ?」
アルビー
「……お互い、厄介なことに巻き込まれたみたいだね」
とりあえず、会話は通じる。すぐに危害を加えてくることはないだろうと思う。
アルビー
ここで、二人の服装などがどうにも自分の生きていた時代の型とは異なる気がすることに気づく。
アルビー
「申し遅れたね。俺はアルビー・ミッドフォート」
出身国名と肩書(官僚)を述べ、軽く自己紹介した。
リラ
「アルビーさん」
目の前の彼が告げた名前を反復する。接した感じ、多分すごく頭のいい人なんだろう。
リラ
「あ、私はリラです。歳は15……あ、今年16になるんですけど……」
同じく、それから軽めに自己紹介をした。
リラ
「初めまして。よろしくお願いします」
これはアルビーさんだけじゃなく、ピンク髪の人に向けてもの挨拶だ。
アルビー
「リラちゃん」
自己紹介を繰り返すように名前を呼びながら、妹と同い年くらいだなと思った。
アルビー
こんな場所に急に迷い込んだのに、気丈で明るくて偉いなと思う。
ティット
「あはっ!」
ティット
「なんて和やかなやりとりだろう!アンタら、随分と簡単に状況を受け入れるね!見知らぬ世界に放り出されて、不安にならないワケ?」
人外の勘により、ここが異世界であると理解している様子。
ティット
「いやいや、あっぱれ。感心しちゃうな~。適応能力の高さは生存に有利に働くからね?生物としてアンタ達は優秀なんだろう」
ティット
「で、何だっけ?自己紹介かー……」
ティット
「はじめまして。アルビー。そしてリラ」
ティット
「オイラはアリス。どうぞよろしく」
だって、招待状の宛名にある名前はアリスだったろう?
アルビー
(不安はあるけど、目の前に見知らぬ不安げな子供がいたらそちらを安心させるのが先決だからなあ……)
アルビー
「はは、それを言うなら俺やリラちゃんもきっとアリスだよ」
アルビー
「まあ、名乗りたくないならそれでいいさ。名無しのアリス君」
ティット
「うんうん、ありふれた名前だかんね。重なることもあるんじゃない?」
リラ
(え! アリス!? じゃあ私の宛名間違ってたんだ!? って思ったけど……アルビーさん曰く、嘘……?)
アルビー
リラ
(なんなんだ、この人。さっきから……)
じとー、とピンク髪の人を見た。
アルビー
「……さて、これからどうしようね? どうやら俺たちは、下手するとそれぞれ別々の世界から、ここに飛ばされてきてしまったみたいだけど」
ティット
「え?もしかしてこのまま流されるの?オイラに興味がない?あ、そう………………」
ティット
「アンタ、一見人当りよさげに見えて、実は相当失礼な男とみた」
ティット
「それに比べて、お嬢ちゃんは分かりやすくてグッド!花丸あげましょう」
じとーと不審げな眼差しを送るリラに指で花丸を書いて贈る。
ティット
「――オイラから言わせれば、簡単に自分の名前を名乗るアンタらの方がよほどおかしいって感じるね。名前は大事だ。人間は名付けによって物を認識し定義し支配する」
ティット
「名を統べるものはすべてを統べるのさ」
ティット
「さて、アンタら、容易にオイラに名乗ったりして本当に良かったのかな?」
アルビー
「一理ある。確かに名前は大事だね」
初対面でのっけから面倒な問答を吹っ掛けられたが、アルビーは本来こういうのがあまり嫌いではなかった。
アルビー
「でも、だからこそ他者に対して名乗ることで警戒心のなさを示せるんじゃないかな」
アルビー
「君が本名を名乗りたくないなら、それでいいよ。でも、それは興味がないわけじゃない。アリスと名乗った君の意志を尊重したいだけさ」
ティット
「それはどうも、ご配慮ありがとう」
ティット
「似非爽やか笑顔でのらくらするのがアルビーの処世術ってワケだ。それはまた賢い選択ですこと。オイラにゃ、アンタに警戒心がないとは到底思えないけど、アンタの言も一理ある」
リラ
ふむ……何やら難しい話をしている。楽しそうにバチバチしているのが見えるぞ!
ティット
「そのお心遣いに感謝して、ここはオイラが引くとしますか」
ティット
「ただなぁ~、そのにこやかな紳士ヅラでアリスと呼ばれ続けるのも、当て擦られてるみたいで落ち着かない気がする……」
ティット
「なんで、んー、そうだなぁ」
ティット
「オイラのことはティットと呼べ。本物の名か、偽物の名か、それはご想像にお任せしますので」
アルビー
似非爽やか笑顔とか、にこやか紳士面とか好き勝手言われて。
「失礼だな~……」
とか言いながら、けっこう楽しそうに笑っている。
リラ
「わー! ティット! 可愛い名前!」
アルビー
「オーケー。よろしく、ティット」
ウィンクした。
ティット
「…………へいへい」
リラ
「よかった~。ずっと名前呼べないのはなんかちょっと寂しいもんね」
ニコニコした。
ティット
「アンタは、もちっと警戒心を養え。な?」
リラ
「そんなこと言われても……。まあ、はい……」
アルビー
「それで……自己紹介も済んだところで、なんだけど」
アルビー
「ずっとこの荒野にいるわけにもいかないし、周りを探索してみた方がいいかなと思うんだけど、どうだろう」
アルビー
「どこかにこの世界のことがわかる人がいないかなって……」
と言いながら、改めて辺りを見渡す。
ティット
「いいんじゃないの?――リラもそれでいいか?」
リラ
「はい。いいと思います!」
リラ
「不思議の国に来たみたいで、わくわくするな……」
暢気しているが、賛成のようです。
GM
3人が荒野を見渡しても、とくに人影などはありません。
目印となるようなものもないでしょう。
GM
そこへ…………
 
上から。何か音がします。
 
濁った空に、なにかが見え、それは次第に大きくなっていき……
 
「わーーーーーーーーっ!」
あなたたちのすぐ近くへ。
 
飛来したそれは、しゅたっ!と華麗に着地します。
 
「わ!」
 
大きなうさぎの耳。首にかけられた認識票(ドッグタグ)。白い衣装。
 
あなたたちを見て、それが駆け寄ってきます。
 
「ようこそ!」
「あたらしいアリス!」
ティット
「なんだ、この頭の中に麦わら詰まってそうなガキ…………」
アルビー
「――!」
再び、咄嗟に銃を手を伸ばして。
リラ
「うさぎ!? うさぎが話してる!?」
わたわたしているが、かわいい~とも思っている。
アルビー
敵意がないのを感じ取って、また手を下ろした。
ティット
「愛玩動物か何かじゃない?首輪ついてるし?」
アルビー
「君は……この世界のひと?俺たちを待っていたのかな?」
うさぎ!と思いながら、表面上は和やかに声をかける。
 
「?」
くびをかしげています。かわいいですね。
リラ
かわいい。
アルビー
(可愛いな……)
ティット
「ちょっと足りてないのか?まあ、うさぎだからな」
こめかみの辺りを指差しくるくる指を回す。
アルビー
「どこから来たのかな?」
迷子に話しかけるみたいな口調になってる。
ティット
「出た。好青年ぶりっこだ」
 
「ぼくたちのアリスがいる村!」
 
「あたらしいアリスたちもおいでよ!」
 
「ぼくたちのアリスが、君たちとおしゃべりしたいんだって!」
リラ
「アリスって複数制なんだ……」
でもそうか。この三人も『アリス』と手紙に呼ばれた?みたいだったし。
ティット
「あっちもアリス、こっちもアリス。どうにもレアリティないなぁ……」
アルビー
ティットの呟きは軽く流しつつ。
「……とりあえず、行ってみようか? 先達の声を聞くのは大事だしね」
 
「わーいっ!おいで!おいで!」
 
ぴょんぴょん跳ねています。
リラ
「かわいい~!」
若者なので可愛いものに弱い。
ティット
「いーんでない?班長の提案にはおとなしく従いますよっと」
ティット
「進むは勇者の所業、立ち止まるは賢者の所業さね~」
アルビー
「こんな水も食料もないところで立ち止まって野垂れ死ぬのは、ちょっと賢くなさそうだからね」
ティット
「ははっ」
アルビー
「……というわけで」
うさぎの方を向いて。
「案内してくれる?」
ティット
アルビー
内心、密かに、
(これ、当分元の世界には戻れそうにないっぽいな……)
無断欠勤、失踪……と思っている。
 
「やったぁ!」
「ついてきて!いっしょにいこう!」
 
ぴょんぴょん跳ねながらあなたたちを案内します。
リラ
「あの……」
うさぎに向かって、少しおずおずと口を開く。
リラ
「もしよかったら、手をつないでみたいんだけど、いいかな……? こんな機会、またとないだろうし……」
ちょっとそわそわしている。
ティット
「おやまぁ、微笑ましいこと」
 
「いいよ!」
リラの手をきゅっと掴みます。警戒心とか全く無いですね。
アルビー
(和むな……)
リラ
「あの! さっきから皮肉言われてることわかってるんですからね!」
ティットに嚙みついていると、じんわり広がる体温。
ティット
「いやいや、そんな?穿った見方はリラに似合わないよ?キミはもっと物事を素直に受け取る美徳を大事に守っていこうね~」
リラ
「か、かわいいし、嬉しい~~~~……。ありがとう!」
威勢のいい態度はすぐに落ち着いた。ぎゅっと手を握る。
アルビー
――ほっこりする光景を目にして微笑みながら、思う。
ティットにも言われたが、この少女には警戒心が薄い。
彼女の分まで警戒して、何かあったら、そのときは自分が守らないと。
リラ
ティットになにか言われた気がしたが、知らないふりをした。
ティット
「だらしのない緩んだツラしちゃってまぁ~」
ティット
「…………って思わない?」
急にアルビーに振った。
アルビー
大丈夫、やれる。自分はそれができる人間だ。
銃には手をかけず、しかし握ったグリップの冷たさに思いを馳せていたところに……
アルビー
「新しい世界を楽しめるのはいいことだと思うよ。ずっと張りつめているよりはね」
内心を巡る決意を覆い隠して、自然に笑ってみせた。
ティット
「…………」
ティット
「……ま、いいけど。アンタまでゆるゆるだとオイラ達あっけなく全滅しそうだし」
ティット
「アンタはそうしててよ。班長」
アルビー
「長になった覚えはないんだけどなあ……」
そんな感じで、一見和気あいあいと、うさぎについていった。
GM
ふしぎなうさぎについていくと、切り立った崖がそびえ立ちます。
 
「こっち!」
GM
うさぎが指差すのは、壁のような崖に、扉のごとく置いてある大きな石。
GM
大きな石の先は洞窟になっているようで、隙間から洞窟の中へ入っていけそうです。
 
「この中がぼくたちのアリスの村!」
GM
あなたたちは少し不審に思うかもしれませんが、うさぎの様子を見るに、罠とかではなさそうです。
ティット
「うさぎの巣穴かぁ…………」
リラ
「まあでも、怪しくなさそうだよ?」
アルビー
虎穴に入らずんば虎子を得ず……(兎穴だけど)と思いながら、気を引き締めてついていく。
ティット
「脳みそお花畑のリラちゃんの怪しくなさそうってお墨付きは悪戯に不安心を煽るよねぇ……」
リラ
「あ! また悪口! でも行かないと始まらないでしょ」
とか何とか言いながら普通に洞窟に入っている。うさぎといっしょに。
ティット
「おっと、本当に警戒心が欠如していらっしゃること」
ティット
まあ、今更ここで躊躇する意味はないのでついていく。
GM
中へ入ると…………
GM
まず広がるのは、一面の原っぱ。
GM
草花が絨毯のように広がり、まるで絵本の中の世界に来たかのよう。
GM
先ほどまで見ていた、荒れ果てた荒野はありません。
 
「ついた!」
 
「ここがねえ、ぼくたちのアリスの村だよ!」
三月兎たち
案内したうさぎたちと同じような幼いうさぎたちがそこそこの数いますね。
アルビー
「大所帯だね。それに随分と和やかだ」
三月兎たち
みんなあなたたちに興味津々……というわけでもなく、普通に無視して遊んでいるうさぎもいます。
リラ
(やっぱり夢かなあ……)
こんなのどかなのって、そうそうない。
ティット
「村にしちゃ家屋の数が少ねぇ。こりゃやっぱりうさぎの巣穴だなぁ」
ティット
「あーあー、うじゃうじゃいる」
GM
建物がそこら中にあるような村ではないようです。
GM
ポツポツと家屋や倉庫などの小さな建物があり……村の中心にだけ、一際大きな建物が立っています。
アルビー
辺りを油断なく観察している。
アルビー
「君たちの『アリス』はどこかな?」
 
「あっち!」
GM
うさぎが指し示す方に、人影が見えます。
それもみっつ。
GM
大きな建物の前に、三人の人物。
一人は麦藁の冠をかぶっており、他二人はカップルのようで、互いの手を繋いでいます。
リラ
「あ、ちょうど誰かいるみたいですね」
リラ
「誰かがアリスなのかな? それとも私たちみたいに三人みんな『アリス』なのかな?」
うーん? と疑問を口にした。
GM
三人の人物のうち、麦藁の冠をかぶった人が、あなたたちに気づきます。
ストレナエ
「おや、救世主様が、また」
ストレナエ
「こんなに来るとは珍しいですね。ようこそ、麦藁の村へ」
あなたたちに近づいてきます。
ストレナエ
「私は『ストレナエ』。この村を管理しているものです」
ストレナエ
丁寧にお辞儀をしてきます。いい人そうですね。
アルビー
「こんにちは、ストレナエさん」
丁寧にお辞儀を返す。
アルビー
「俺はアルビー・ミッドフォート。そちらの二人と……」
ティットとリラを指し示す。
アルビー
「同じタイミングで、先ほどここに迷い込んだみたいです」
リラ
紹介を受けたので慌ててお辞儀をする。ぺこり。
ティット
「やぁ。こんにちは、ストレナエ。素敵な麦藁の冠だね」
ストレナエ
「あらあら……もしかして、来たばかり、といったところですかね?」
「『堕落の国』についての詳細は御存知?」
アルビー
「はい。堕落の国というんですか? この世界のこと、まだ右も左もわからなくて……」
アルビー
「よかったら、色々教えていただけるとありがたいです」
 
「わっ、そしたら、わたしたちのこうはい?こうはいになるのかしらっ?」
隣で話を聞いていた人物が声をあげます。
 
「え!堕落の国にきてすぐにここに来られるなんて、お兄さんたち、すっげーラッキーじゃん!リセットマラソンでもした?」
もう一人いた方も声をあげますね。
ストレナエ
「そうですか。我々の方が少しだけ滞在歴が長そうですね」
ストレナエ
「こちらにいるお方たちは2ヶ月。私は1年、この国で生きています」
ストレナエ
「よろしければ、この村にしばらく過ごすことをおすすめしますよ」
「堕落の国について学べることでしょうし……」
ストレナエ
「それに、最近、邪悪な不可視の救世主がこのあたりを荒らし回っているようですので…………」
ストレナエ
「この村なら、私と三月兎が守れるので、安心ですよ」
ティット
「甘言は悪魔の誘惑だぜ?どうする班長?」
おまえが言う台詞か?
 
どうやら外に出ると危ないらしいですね。
リラ
アルビーに任せるのに特に異論はないようだ。
アルビー
「そうだね、外に放り出されてもどうしようもないし、お言葉に甘えて、しばらくお世話になろうかな?」
警戒は全然怠っていない……というか正直そこそこ嫌な想定もしているのだが、笑顔でそう言った。
 
「そうそう!こんな安全地帯なかなかないよ!土ほって豆腐の家作るよりずーっと安全!」
 
「みんな、わけわからないあらしにとばされちゃうのはいやだものね」
リラ
「嵐が?」
さっきまではそこまで悪い天気には見えなかった気がしたので。
 
「そうよ!それも、わたしたちとおなじ、きゅうせいしゅのしわざっていわれてるわ」
 
「実際のところ不明だけどね。なにしろ見えないらしいし。ダミーデータ?的な?」
リラ
「だ、だみーでーた?」
リラの世界にはない単語だったのでよくわからなかったが……
アルビー
「救世主というのは、アリスと同じ意味なのかな?」
アルビー
「ここでは、俺たちのように異世界から来訪した者がそう呼ばれると?」
 
「そーうそう!皆さんもってるでしょ、招待状!」
ティット
「なるほどねぇ~」
アルビー
「……ちなみに、元の世界に戻る手段は?」
一年とか不穏な言葉が聞こえたが……
 
「んー、それは……とりあえず、わたしも、かれも、しらないわ」
ストレナエ
「私も同様に。……すぐに帰れるような場所ではないですね」
ティット
「一年なんてあっという間だろ?何を狼狽える必要が?」
時間感覚が人外のそれ。
アルビー
「なるほど……」
家族や仕事のことが脳内をぐるぐるしている……。
リラ
「…………」
それは、すごく、困るかも。
ティット
「まあ、ゲームはルールの把握から始まるもんだ。判断材料を集めるところから始めないとね」
中世世界出身のためデジタルゲームは解さないが、物事は全てゲームだと思っている。
ティット
「じっくり腰を据えてやらないとかな?」
アルビー
「……それは同感だね」
なんにせよ、今はこの状況下でできることをやるしかない。
リラ
「寝たら覚める夢とかではなく……現実?」
ほんとうに? ひとりごとのように呟く。
ティット
「さぁ、どうかねぇ?試してみれば?」
リラ
「……うん。そうだね。まだわからないもんね」
アルビー
(仕事……は、まあ、俺一人いなくてもどうにかなるだろう。戻っても席は残ってなさそうだけど)
(父さん……は烈火のごとく怒ってそうだなあ)
(母さんは狼狽して……一番心配なのはヴァイオレットだけど)
ヴァイオレット=妹。
アルビー
(参ったな……)
 
「で、でも、しんぱいすることないのよ。こうはいたち!」
 
「もとのせかいにもどったとき…………じかんがとまっているかもしれないわ!」
 
「そうしたら、ほら!いろいろなけいけんができて、たのしかった、ってなるでしょう?」
リラ
「た、確かにそうなのかも」
流されやすい……
アルビー
「そうだとありがたいね。長い、いい夢ということになれば」
 
ちょっとだけ、片割れの彼女を見つめてから。
「…………そう!そうだよ!戻ったときには、強くてニューゲーム!そう考えればいいじゃん?」
リラ
先行きはわからないが……とりあえず、今わかっていることは一つだけ。
「ありがとう、優しいんだね。あなたたち」
ティット
「かもしれない、だろ?何の確証もない説法だなぁ。――ま、その可能性はあり得そうだがね」
ティット
「強くてニューゲームだぁ?ははっ、インチキくせぇ」
 
「なにおう~~!小生意気な後輩だぜ!」
こうは言っているけど、嬉しそうです。
リラ
「せ、せっかく慰めてくれてるのに……」
ティットの言い分にちょっとどうなんだ? と思ったが本人たちが嬉しそうなので、まあいいかと思った。
ティット
「ふふん。オイラは何もインチキを否定なんざしてねぇさ。イカサマは技量だ。だが、ゲームはルールがなくっちゃつまらない。そうだろう?先輩?」
アルビー
ティットのあけすけな物言いを、気持ちいいなと思いながら聞いている。
 
「ふふん、プレイヤーみたいなこと言いやがる。でも、それはシステムを把握してから言うべきだぜっ」
ティット
「そりゃ至言だなっ」
ティット
「じゃあ、システム把握のため、ご高説を賜るとするかな」
 
「おうよっ、なんでも聞け~~?」
胸を張っています。
ストレナエ
「……では、皆様。滞在するということであれば、お部屋をご案内致しますね」
GM
ストレナエは5人の救世主たちを、大きな建物(ストレナエの屋敷)の客室へ案内します。
ストレナエ
「この部屋はご自由にお使いくださいね」
「食べ物、飲み物は三月兎……そとにいるうさぎたちのことですね。あの子たちに言いつければ、すぐに出てきます。この村はとても豊かですので、食料が余っているんですよ」
ストレナエ
「特にワインはとてもおすすめです。アルコールが苦手な方でも、ぶどうジュースがありますので、ぜひ飲んでみてくださいね」
ストレナエ
「よければ、あのこ(三月兎の末裔)たちとも、遊んであげてください。きっと喜びますよ」
GM
いきなり堕落の国に来てしまったあなたたち。
GM
ですが、この村にやってきたことで、一時の安寧を得たのでした…………。
GM