6:ことばはつむがれかたられるか

みずたまり
「ゆゆゆぅ!」
「ゆゆゆぅ!」
*かりかり*

みずたまり
「《だいぶ》 《ことば》 《おぽえ》 《ました》」
「《だいぶ》 《ことば》 《おぽえ》 《ました》」

招待客のTさん
「ほう。喜ばしいことだ」
「ほう。喜ばしいことだ」

招待客のTさん
「だが、時間は残り僅かだ」
「だが、時間は残り僅かだ」

みずたまり
「《あしれと》《いつ》《きます》」
「《あしれと》《いつ》《きます》」

招待客のTさん
「それはそなたが知るべきことではないな」
「それはそなたが知るべきことではないな」

みずたまり
「ゆゆ!ゆゆゆっ!」
「ゆゆ!ゆゆゆっ!」

みずたまり
「《しりたい》《おしえて》 《やくにたつたい》」
「《しりたい》《おしえて》 《やくにたつたい》」

招待客のTさん
「嬉しい」
「嬉しい」

招待客のTさん
「そなたがそのように感じること、表現すること。とても嬉しいが、教えることはできない」
「そなたがそのように感じること、表現すること。とても嬉しいが、教えることはできない」

みずたまり
「《どうして》」
「《どうして》」

招待客のTさん
「知ること自体が弱点となりうるからだ」
「知ること自体が弱点となりうるからだ」

招待客のTさん
「アシレトは、自身を知る者を破壊する。存在自体が大きな罠であり、認知するだけでその効果は現れる。一種の情報災害というやつだな」
「アシレトは、自身を知る者を破壊する。存在自体が大きな罠であり、認知するだけでその効果は現れる。一種の情報災害というやつだな」

みずたまり
「《なら》 《すること》《なですか?》」
「《なら》 《すること》《なですか?》」

招待客のTさん
「そなたは引き続き花を追い求めればよい。最近では我輩と同行しなくとも、花を集められるようになっただろう」
「そなたは引き続き花を追い求めればよい。最近では我輩と同行しなくとも、花を集められるようになっただろう」

みずたまり
「ゆー……」
「ゆー……」

招待客のTさん
「できることが見えないのは不安だろう」
「できることが見えないのは不安だろう」

招待客のTさん
「だが、それこそが生き物としての生きる原動力となるのではないか?」
「だが、それこそが生き物としての生きる原動力となるのではないか?」

招待客のTさん
「ソラニワにいる生き物たちの声に耳を傾け、我輩はそう考えた」
「ソラニワにいる生き物たちの声に耳を傾け、我輩はそう考えた」

招待客のTさん
「見えなくとも見ようとする」
「見えなくとも見ようとする」

招待客のTさん
「知らなくても知ろうとする」
「知らなくても知ろうとする」

招待客のTさん
「なくてもあろうとする」
「なくてもあろうとする」

招待客のTさん
「生き物とは、そういうものではないのだろうか」
「生き物とは、そういうものではないのだろうか」

みずたまり
「ゆゆゆ。ぷーぷわ」
「ゆゆゆ。ぷーぷわ」

みずたまり
「《ちょとおもます》」
「《ちょとおもます》」

招待客のTさん
「うん?」
「うん?」

みずたまり
「《てん》 《いきもの》 《ちがう》 《けと》」
「《てん》 《いきもの》 《ちがう》 《けと》」

みずたまり
「《いきもの》 《てん》 《おなじみてる》」
「《いきもの》 《てん》 《おなじみてる》」

みずたまり
「……」
「……」

招待客のTさん
「……ふむ」
「……ふむ」

みずたまり
「ゆ…………」
「ゆ…………」

みずたまり
「《てん》 《め》 《もう》」
「《てん》 《め》 《もう》」

招待客のTさん
「言うな」
「言うな」

招待客のTさん
「いいや、語るな、か」
「いいや、語るな、か」

招待客のTさん
「『これ』は物語れる話ではないのだ、水鏡よ」
「『これ』は物語れる話ではないのだ、水鏡よ」

招待客のTさん
「ただ、あっただけの、そういう事実だ」
「ただ、あっただけの、そういう事実だ」

招待客のTさん
「成長はない」
「成長はない」

招待客のTさん
「展開はない」
「展開はない」

招待客のTさん
「生死もなければ」
「生死もなければ」

招待客のTさん
「交わりもない」
「交わりもない」

招待客のTさん
「そうならなくてはならない」
「そうならなくてはならない」

みずたまり
「ゆー、ぴゅゆゆ」
「ゆー、ぴゅゆゆ」

みずたまり
「《りりと》」
「《りりと》」

招待客のTさん
「ああ」
「ああ」

招待客のTさん
「……………………そうだったな」
「……………………そうだったな」

招待客のTさん
「…………」
「…………」

みずたまり
「《りりと》」
「《りりと》」

みずたまり
「ゆ!」
「ゆ!」

みずたまり
「《たすけたい》」
「《たすけたい》」

みずたまり
「ぷーわ!」
「ぷーわ!」

招待客のTさん
「…………」
「…………」

みずたまり
「ゆ」
「ゆ」

みずたまり
「《てん》」
「《てん》」

みずたまり
「《わかてるます》」
「《わかてるます》」

みずたまり
「《りりと》」
「《りりと》」

みずたまり
「《みずかがみ》」
「《みずかがみ》」

みずたまり
「《なんとかできるおもてます》」
「《なんとかできるおもてます》」

招待客のTさん
「…………」
「…………」

招待客のTさん
「…………」
「…………」

招待客のTさん
「…………」
「…………」

みずたまり
「ゆ」
「ゆ」

みずたまり
「《おなか》 《りました》」
「《おなか》 《りました》」

招待客のTさん
「そうか」
「そうか」

招待客のTさん
「少し早いが朝食にしよう、水鏡」
「少し早いが朝食にしよう、水鏡」

みずたまり
「ゆゆゆ!」
「ゆゆゆ!」

肉が*ばちんばちん*と爆ぜる音がする。
骨は*ぱきゃりぱきゃり*と欠け、皮膚は*べじゅりべじゅり*と破れ、*だくんだくん*と血が流れている。
あの時を思い出すような惨状だ。
でも、この状態はお天道様に見られているときとまるで違う。
ひたすら冷たくて虚しいんだよ、ばかやろうが。
ちっとも思いが伝わらない、ただたんにやってます、みたいな態度が、あけすけなんだよ、ふざけんな。

◆◆◆◆
「面白い。まだやるか。そろそろ飽きたらどうだ?こちらは都合がいいが」
「面白い。まだやるか。そろそろ飽きたらどうだ?こちらは都合がいいが」
面白くもなんとも思ってないくせに嘘ついてんじゃねえよ、かみもどき。
まるで虚無とやりあってるようなもんだ。空気相手にボクシングしてたほうがまだスッとする。
絶対にわからせてやらなくちゃならない。
無駄でも、勝てなくても、傷を残して、そこからじわじわと、理解させてやらなきゃならない。
だって、お天道様と同じだもの。
すべてを知ってるくせに、なにも感じたことがなかった、お天道様と。
俺の恋したしかばねと!
生き物は駒だ。そうだ。でもそれだけじゃない。
世界は理屈だ。そうだ。でもそれだけじゃない。
感情は不要だ。そうだ。でもそれだけじゃない。
あらゆる正しさを、あらゆる明るさを、あらゆる解に傷をつけ、完璧なそれを崩してやらなきゃ。
俺は魔王だ。
必ず負ける。必ず滅ぶ。それでもなお、《神》を乱して歪ませる。《紙》を揺らして歪ませる。
諦めてなるものか。終わらせてなるものか――!


「いやいや」

「引き伸ばしは不利ですってば」

「相手はアシレトだけじゃなく、うとうとしてる『紙』さまもいるんですから」

「千日手はここで終わりですよ、魔王様」

◆◆◆
「…………」
「…………」

◆◆◆◆
「…………」
「…………」
「『だれだ?」』


「どーも。」

「チラシの裏の《ダミーテキスト》です」
このレポートはこわれています。
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